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課長は何処からか茶色いA4サイズの封筒を取り出し、蓮に突きつけた。
「これは…?」
不審な目で蓮は渡された封筒を見、課長を上目遣いで見た。
「当時の事件資料に…山田リカ子の生まれてから失踪までに撮られた写真だ。」
「……」
驚きの顔で蓮は課長を見た。
「集めんの大変だったんだぞ。しかも、当時の事件資料を集めるのに俺がどれだけのことをしたか…。
ほら、さっさと見ろ。写真はお前にあげれても事件資料まではプレゼント出来ねえ」
突き放すような言い方をしているが、課長の顔には小さな笑みが浮かぶ。
「いいんだ…。俺も定年まであと少し。
お前が前に進んで、時雨までもが前に進もうとしている。
それを助けてやることだけしか俺にはできないからな。」
いつか訪れる別れの話。
蓮は泣きたい感情をグッと堪え、口のはしを小さく上げ、ゆっくりと頷いた。
そのまま何も言わず、素早く封筒の中身を開け、黙々と事件資料を読んだ。
きっと資料を見れるのは今日限りだろう。
細かいところが重要なポイントになったりするのを知っている。
蓮は内容を必死で頭に叩き込んだ。
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