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11月9日。
手紙が時雨の元に来て、5日が経っていた。
だが、5日間の間に時雨にも蓮にも、何も異変は起こっていなかった。
時雨は身の回りをかなり警戒しているが、山田リカ子の気配さえなかった。
無論、時雨は蓮に山田リカ子から手紙が来たとは言っていない。
この日、時雨は愛車に乗り込み、ある場所へと走らせた。
11月ともあって寒い。
昼間になれば、そこそこの温度はあるものの朝と夜は、やはり冷える。
時雨はコンクリートで囲まれた場所へとやってきた。
刑務所だ…。
受付で名乗り、面会したい人物を言い、
適正な手続きを済ませて面会へと向かった。
プラスチックの仕切られた一室に置かれたパイプ椅子に座り、面会の相手を待った。
プラスチックの向こう側のドアが開いた。
時雨は椅子に座ったまま、無表情でその相手が椅子に座るのを待った。
「お久しぶりですね…」
と言った時雨の声はぶっきらぼうであるが、何処か優しさを感じさせなくもない。
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