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「よお。」
小さく口元を上げて相手は…相田は言った。
相田は久しぶりに時雨に会えて嬉しそうだ。
「お元気そうですね…。まだ奥さんは毎週日曜日に会いに来て下さってるんですか?」
冷やかすように時雨が言った。
相田は娘の綾乃の命を取ったとも言える医者に“復讐”をし、刑務所に入っているのだ。
離婚を覚悟していた相田とは裏腹に、相田の妻は相田に尽くしていたのだ。
「いや…毎週来るって言うのはヤメロって俺が止めたよ。だから今は月に一回だな。」
そう言うと相田はニヤリと笑い、言った。
「何か不安でもあるのか?」
時雨は一瞬、ドキリとした。
なんかウザ…。
と思いながらも、時雨は頭を振った。
だが、それは否定の意味ではない。
「呆れますね。」
「あ?」
時雨の呟きに相田は眉を潜めた。
「何であなたに出会ったのか…。」
少し目を伏せさせて言う時雨に、いつものような強さも冷徹さも感じることが出来ない。
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