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わざとらしく相田は口を尖らせた。
「俺に出会えて嬉しくないか…。」
わざと言ったつもりだったが、時雨の答えは至って真面目なものだった。
「いいえ。むしろ逆ですよ、相田さん。」
時雨の口から出た思いがけない言葉に、
相田は椅子から落ちそうになった。
「なんだ、お前…。熱でもあるんじゃないか?」
「相変わらず失礼ですね、相田さんは。」
再び眉を潜めて時雨は相田を見た。
「何だ、じゃあ何が言いたい?」
時雨の様子から相田は何かを感じ取ったのだろう。
真剣な声で目の前の時雨に問う。
いつもの無表情さを取り戻し、時雨はゆっくりと言った。
「見付けたんです。」
無表情なものの、時雨のまっすぐな目が相田を捉えていた。
一方の相田も目を大きく見開いて時雨を見ていた。
どうやら相田は時雨のこの一言を聞いて全てを悟ったようだった。
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