2617人が本棚に入れています
本棚に追加
/365ページ
時雨は相田を真っ直ぐに見据えた。
「生きてみたい、と思うんです。」
その言葉を聞くと相田は数秒黙り、ゆっくりと大きく頷いた。
そして、目を少し伏せて嬉しそうに笑う。
「時雨の復讐は終わりか…。」
「いいえ。」
相田の粒やきを時雨はきっぱりと否定した。
「復讐代行は終わりました…。でも、私の復讐はこれからが始まりです。」
「時雨…」
時雨の瞳には一寸の迷いもない。
「警察に…蓮に任せる訳にはいかないのか?」
「無理です。…やっと、やっと、と思えば思うほど、これを誰かに任す事など絶対にできないんですよ、例え蓮であろうとも」
強く時雨は言い切った。
「お前がどれ程の思いを抱いてここまで来たかは、俺はお前じゃないからわからない。だが…」
相田はそこで区切った。
「何をしても、死んだ人間は帰って来ないんだよ…。」
当たり前の事を言ってはいるが、そこには違う意味が含まれている。
自らの娘を死へと追いやった人間に復讐した相田だからこそ言えた言葉だったかもしれない。
.
最初のコメントを投稿しよう!