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11月25日。
1ヶ月前になっていた。
人は焦るほどに時間が早く経過していくらしい。
一秒も、一分も、人々に平等に与えられている筈のものなのに。
朝、リビングのソファーで時雨はコーヒーを飲んでいた。
暖かくした室内に少し熱いコーヒーが、ほどよく時雨を暖めていた。
ふいに部屋の電話が鳴った。
「……」
ゆったりした気分に水を刺された。
「もしもし…」
名前は名乗らない。
人に恨まれる職業柄、時雨は電話で知人など意外には名乗らないようにしている。
数秒の沈黙。
後ろからは電車の踏み切りの鐘と電車らしき音が聞こえる。
『雨乃ちゃん?』
やっと相手が話した。
その声に全身の血の気がひいて、
倒れそうになった…。
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