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大塚は「ちょっと待ってろ」と言って、奥の部屋へと姿を消した。
今のうちだ…。
時雨はすぐに汚い部屋の中を見回す。
この手のタイプの人間は、証拠を残したりなどしていないだろうが、もしもを考えると探さずにはいられなかった。
あの女がここに来た事を
証明できる何かがあれば…。
今の山田リカ子の顔がわかれば。
時雨の中では、もう山田リカ子は整形したと考えられている。
そして、それは予想でもなく、確信なのだ。
足元などに落ちている紙を見て回り、デスクの上に範囲を広げようとした時だった。
後ろ…。
と時雨の危険信号が、時雨に知らせた。
バッと時雨は後ろを振り返った。
大塚が棒を振り上げているのが、スローで見えた。
状況を一瞬で判断し、時雨はデスクの淵を左手で持つ。
左手に体重を置きながら、右足で大塚の腹を押し返すように蹴った。
膝の伸縮とブレない体から放たれたそれは、大塚の体を見事に吹き飛ばした。
吹き飛ばされた大塚は、壁に背中を強打する。
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