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大塚と別れた時雨は、喫茶店に入ってコーヒーを飲んでいた。
まさか、あの女が
あの顔に変えるとは…。
時雨は迷うことなく、山田リカ子を殺すと決めていた。
だが、姉の顔をした山田リカ子を殺すとなると、どうしても姉を殺すような気分になってしまう。
湯気の立つコーヒーに、自らの顔が写る。
左目を隠し、光のない右目だけが見える。
「……」
一瞬、視界がボヤけた。
それはコーヒーの湯気のせいなのか、それとも、視力の落ちている右目のせいなのか。
それとも、例え別の人間であっても姉を殺すことへの抵抗を感じているせいなのか。
「…絶対に許さない。」
周りに聞こえない声で、時雨は呟いた。
今、復讐をやめれば、
これまで自分が奪った数々の命
が無駄に終わる…。
犯罪者にも家族はいた筈だ…。
私は、絶対に許されない…。
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