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12月10日。 取り付けたカメラを見ていて1つの事に気付いた。 赤いコートで、深く帽子を被った女。 毎日という程でもないが、よくいる。 いる場所を点々と変えてはいるが、確かに同じ人間だ。 あと15日。 あの女は妙に鼻がきく…。 しかも白昼堂々と、人を襲う訳にはいかないだろう。 そして何よりも、恐ろしい異常なまでの執着心は周りの人間を巻き込んでも平気な顔をする。 「どうする…?」 時雨は自分に問いた。 誰かが答える訳がない。 何もせず、ただ此方を見ている彼女は25日まで時雨の前には決して現れないだろう。 それが、彼女にとっての私の“姉”に なるための大切な儀式の日だから…。 いや…違う。 “榊永久子”になるための 大切な儀式の日だから…。 “榊永久子”になるために必要なのは、 顔と、永久子の妹である私…。 .
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