2617人が本棚に入れています
本棚に追加
/365ページ
家政婦の女性の誘導で、時雨はこの家の奥まで通された。
広い座敷に縁側。
時雨の目的の人物は縁側に座って外をいとおしそうに眺めていた。
縁側に座るのは、白髪混じりの着物を着た男だ。
「12月にそんなに風を浴びたら…風邪ひきますよ?」
嫌味っぽく時雨が言うと、男は、フッフッと笑った。
「まだまだ…そんなに弱くはない…。珍しいな…来るなんて、嫌がっていたくせに」
男は外を見詰めたまま話す。
「別に。来たくて来た訳じゃない。頼みたいことがあるの。」
憮然と時雨が答える。
そんな時雨の態度を男は気に止めもせず、再びフッフッと笑い、
「探し物が見つかったか?」
と聞いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!