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時雨は窓に寄り掛かると
「そんなとこ。」
と無愛想に答えた。
そこでやっと男は、時雨の方を見た。
シワが最後に会った時より増えているのに時雨は気付き、逆に時雨が外を眺めた。
「何が欲しい?…人を殺す許可か?」
男の優しそうな面持ちからは想像できない言葉が漏れる。
だが、口調は柔らかい。
「そんなの、どうでもいいから…。資料が欲しいの。」
「ふん…どんなだ?」
「田口コウスケの殺人事件について。」
外を眺めている時雨を、じいっと男は見詰めた。
「それは警察か?」
男が聞いた。
「うん、まだ犯人捕まってないからね。早めに頼むわよ、浅川。」
時雨は男…浅川にそう言うと、手をヒラヒラさせ、玄関に向かって歩きだした。
「待ちなさい。」
先程の会話とは打って変わった、はっきりとした声で浅川は時雨を止めた。
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