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蓮は胸ポケットから、紙を取り出した。 大塚が持っていた、山田リカ子を診察した時のメモのような雑なカルテだった。 これがあれば、榊永久子の顔をした人間が山田リカ子だと確実な証拠になる。 もちろん、本人にお願いをしてDNAを出して貰えばいいが、本人はそんなことを承諾しないだろう。 だから蓮は大塚との、散々な交渉の上でこれを貰ってきたのだ。 蓮は課長から借りた永久子の事件資料をレストランに持ってきていた。 その資料を眺めていると、一枚の写真で目が止まった。 自宅写真で、永久子の婚約者の重幸が大量に血を流して倒れている写真だった。 無数の刺し傷。 発見したのは、永久子の妹の雨乃。 資料にそう書かれていた。 山田リカ子が、田口コウスケを殺す日まで、永久子の事件資料に、山田リカ子の名前が出てくることは一切、なかった。
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