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自宅のソファーで、ダラリと横になっている時雨に電話が来た。
公衆電話。
「…はい。」
慎重に受話器を取る。
『…雨乃ちゃん?リカ子だけど…』
か細い声。
すぐに時雨は、山田リカ子の顔を脳裏によぎらせたが、今は永久子の顔をしていることを思い出して顔をしかめた。
『聞いてる?雨乃ちゃん。…大丈夫?』
「う、うん。…大丈夫。」
時雨は、昔の自分を意識しながら答えた。
『そう。』
と答えたリカ子は、
『ねえ、クリスマス、何処で会おっか?雨乃ちゃん、何したい?』
と急に声を明るくして聞いてきた。
「…リカ子さんの…好きなところ…。」
『私の?…そうねぇ、家に行きましょう。』
「家…?」
明るいリカ子の声とは裏腹に、漠然とした不安が時雨を襲った。
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