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大丈夫かと聞かれた時雨は、フッと鼻で笑った。
「どう見ても大丈夫でしょう?」
と自分の体を人差し指で示す。
「そうじゃなくて…」
蓮はそこまで言って、じっと時雨を見詰めた。
山田リカ子が永久子の顔をしていると、時雨が掴んでいると蓮はわかっていた。
だから、そんな事になって心中穏やかでないと思って聞いたのだ。
「…そんな顔しないで、大丈夫だから。」
スッと目を反らし、視線を窓の外に時雨は逃がした。
沈黙。
耐えきれなくなった時雨が立ち上がった。
「もう、行くから。…気を付けて。」
「時雨。」
行こうとした時雨の腕を掴み、蓮は止めた。
「わかってると思うけど…恨みっこなしな?」
おちゃらけた顔で蓮は言ったが、目は真剣だった。
「うん。」
ぶっきらぼうに答えると、時雨は喫茶店から出てった。
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