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赤いコートに黒い帽子を被った永久子の顔をした山田リカ子がいる。
死んだ人が目の前にいるって
何か変な感覚だな…。
悠長に蓮はそう思った。
「あなた…雨乃のなに?」
感情のない言葉でリカ子が聞いてきた。
「は?」
と思わずそう言ってしまってから、蓮は時雨の本名が雨乃であることを思い出した。
「雨乃よ、榊雨乃。あの子に付きまとわないで。」
一気に声音が怒りへと変わり、甲高い声でリカ子が言う。
重症だな、これは。と思いながら疲れと呆れを感じて蓮は溜め息をつきながらも一歩進み出た。
「山田リカ子さん。」
と本名で呼びかけるとリカ子は体を一瞬強張らせたが、すぐに激しい剣幕で
「あたしは永久子よ!!」
と言い、その勢いでコートからナイフを取り出した。
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