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永久子の部屋前まで来た。 ゆっくりと扉を開け、慎重に中に入る。 誰もいない。 当たり前だ。 時雨はリカ子が指定した2時間前に来ているのだ。 永久子がいなくなったままで、この部屋だけは保管されている。 誰もこの部屋に手を着ける気にはなれなかったのだ。 カーテンが閉まって暗い部屋に、少しカビ臭さがある。 時雨は窓まで躊躇なく歩み、ずっと閉ざされてきた、この部屋のカーテンを勢いよく開けた。 朝、8時という日光が部屋の中に降り注ぎ、舞うホコリにキラキラと反射した。 心とは対照的な輝きに、時雨は悲しみを覚えた。 「姉さん…あたし、やるからね…。」 時雨は空に言った。 「母さん、父さん、ごめんなさい…。」 キュッと時雨は自分の左腕をお腹の前で抱いた。 「許して…蓮…。」 .
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