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永久子の広い部屋を見渡しながら、昨日の課長からの電話の内容を思い出し、時雨はギュッと手を握った。
『蓮が倒れた。』
課長は電話で昨日、そう告げた。
どうやら疲れとストレス、それに山田リカ子に殴られたこと等が引き金となっているらしい。
命には別状ないと言うと、課長は何も聞いていないのに、一方的に蓮がいる病院を告げ、電話を切った。
時雨は夜に病院に忍び込み、蓮の病室の入り口から蓮の様子を見て帰ったのだった。
時雨が物思いにふけっている間、意外にも時は早く進んでいたようだ。
時計の針は7時を指している。
あと1時間したら山田リカ子がこの場にやって来る。
時雨は持ってきた鞄から黒い鉄の塊を取り出した。
「これを使うのも、これが最後か…。」
そう言って浅川から貰って、ずっと使ってきた銃の側面を撫でた。
「今までありがとう…。」
時雨は銃をいたわりように弾を1つ1つ、丁寧に詰めていった。
本当に、最後だから…。
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