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何もない天井を見上げながら相田は息を長く吐いた。
今日か…。
昨日からずっと今日という日がどんな日なのか思い出す。
こんな時には無性に煙草が吸いたい。
禁煙した身であるが、つい思ってしまう。
まあ刑務所の中では吸うことなど絶対にできないが。
しかも何より今日は塀の向こう側に行きたくて貯まらず、相田のイライラは増加する。
「あー…クソッ。」
相田は苛つきを堅い壁にぶつけた。
こんな日に、こんな日だからこそ、脳裏に娘の顔が浮かぶ。
二度と帰ることのない娘が。
触れる事ができない娘が。
「時雨…お前はずっと、こんな気持ちを抱えて生きてたんだな…。」
苛つきと共に増すもどかしさを流すかのように、相田の頬に一筋の涙が流れた。
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