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昔呼んだ呼び方でリカ子が時雨を呼んだ瞬間、リカ子は呼んだ自分に驚いたのか目を見開いた。
時雨の瞳の奥で黒い炎が激しく燃え上がる。
「わ、わたしはっ…榊永久子よ…。」
後ずさりながら助けを請うように震える声で言う。
「違う。」
ピシャリと時雨がリカ子の言葉を切った。
床を這って後ずさるリカ子をソファーが遮る。
「山田リカ子、アンタは男嫌いの同性愛者。自分の好きな相手が男と付き合うのが許せなくて…自分以外を見ることが許せなくて殺したの!」
「そんなこと…」
私はしてない、そう言おうとしていたリカ子だったが、急に口を噤んでしまった。
「私はアンタを信じてた…。だからこそ、アンタが嫌い、大っ嫌い。憎くて憎くて堪んない。」
怒りにまかせて時雨はリカ子の額に銃口を強く押し付けた。
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