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「まさか、泣いちゃうとは思いもしなかったわ。」
帰り道、時雨が頬を指で掻きながら言った。
「そんだけお前のことを気にかけてくれたんだよ。」
並んで歩く蓮は小石を蹴りながら少年のように笑う。
「皆して…そんなに嬉しいもの?」
「嬉しいに決まってるだろ。俺も含めてね。」
ジーンズというラフな格好に決めた蓮は刑事という雰囲気を消していた。
寒さで吐く息が白い。
急に時雨は目の前にいる蓮が儚く見えた。
「時雨?」
時雨の悲しげな表情に気付いた蓮がどうしたのかと聞いた。
ゆっくりと時雨は頭を横に振った。
「ダメね。ずっと人を殺していたからかしら?」
「…?」
「あなたは…人はすぐに死ねる生き物だと知ってる。」
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