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そう言った時雨の表情は今にも泣きそうだった。
「だからこそ必死になって生きてるんだろう?」
しっかりと時雨の両目を捕らえて蓮は言った。
そして、下げていた時雨の左手を右手でぎこちなく握った。
「大丈夫。なるように人生はなってるって。」
蓮の適当な返事に、時雨は思わず吹き出してしまった。
「笑うなよ。」
「笑ってない。らしいなって思っただけよ。」
ふわりと時雨が微笑んだ。
写真で見た永久子に面影が少し似ていて、やっぱり姉妹だなっと蓮は思った。
「笑ったのには変わりない。失礼な奴だ。」
蓮が口を尖らせる。
「ありがとう、蓮。」
前を向いたまま時雨は無表情に言った。
「ん…」
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