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―――
――
「遅いよー、ナツちゃん。次、君の曲だよ。」
戻ってきて一番に一人の男性にそう言われた。
…思えばこの人たちにもすまないことをしたな。
合コンに来たはずが、宴会につき合わせて。
―まあ今日のことはさっぱりと忘れて、次頑張ってくだせい。
「ゴメン!それ、演奏停止にしといていいよ!今日、今からバイトあるの、忘れててさ!」
心の中でもで謝りながら、
私は慌てて荷物を片づけ、早口でまくしたてた。
「えー、もう帰んの?」
「うん…、ごめん。後は皆で楽しんで!」
本当にすまなそうな顔(パート2)を作ると、男性陣も、承諾してくれた。
「あ~じゃあ、しょうがないね…。」
「気をつけて帰りなよ。」
…イケメンズのみなさま。温かい言葉をありがとう。
「え~マジ残念~。」
「じゃあねぇ、ナツ。」
…ギャルズのみなさま。全く心のこもってない、むしろ殺意のこもったセリフをありがとう。
私は静かにドアを閉め、カラオケ屋を後にした。
――
外にでると、もうすっかり辺りは暗くなっていて、肌寒かった。
私は新鮮な空気を目いっぱい吸い込んでは、吐く。
ひと段落。
そして、
数歩歩いたところで後ろを振り向き、ほくそ笑んだ。
「…さて、今頃は気まずい雰囲気だろうね。もうすぐ解散、かもね。」
背をむけて、私は夜の街の中に消えた。
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