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「そ、じゃあね。」
国崎君はようやく私の手を離すと、
笑顔を貼り付けながら、ヒラヒラと手を振った。
手を解放されると、私はすぐに踵をかえし、
かなりの早歩きで歩き出した。
…1度も振り返らずに。
ただひたすら、ずんずんと歩いていった。
なので、国崎君が私をじっと見ていたのにも、もちろん気付かなかった。
――ああぁ……目立つのキライなのに!
あの国崎のボケのせいで私まで注目が集まったじゃないか!!
なにあの視線!コワイ!
空気のように生きるのが人生の目標だったってのに!
しかも!
明日も会うとか、本気で、ヤダ。
まんまと私をはめやがって…!
あいつ、絶対私をからかって楽しんでるし!
あ~もう、死ね!
滅べ、ボケナス!
心の中で、悪態をついてついて、つきまくる。
―しかし、『また明日』という約束が私の首を絞め、全く気分は晴れない。
ああ~~~!
何でこうなったんだ!
何かバチあたるようなこと、したか?私っ。
こんなに全力で、
明日なんか来なければいい、と思ったのは初めてだっ!
――
どこをどうやって帰ってきたのか覚えてないが、
気付いたら、私の家の前だった。
乱暴に鍵をあけて中に入り、積み上げてある布団に倒れ込む。
「ぅぐああぁーーぁあ………」
…女子にあるまじき妙な唸り声は、今日だけは目をつぶってくれ。
マジで、混乱してるから。私。
「くう……」
私は、目を閉じながらぐっと拳を握りしめ、ただ、想った。
…願わくは、目覚めたら、
今日の――ついでに昨日の――出来事がすべて夢でありますように。
…………。
…本気で頼みます、困ったときの神様あぁぁ!
私にはロマンスより、平穏をくれ!
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