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……凄い、凄すぎるよ……。私と変わらない歳なのに、こうも簡単に恐い男の人を三人も倒しちゃったよ。
でも、倒した技がどうも素直に格好いいって言えないな~。
だってあれだよ、あれ。
その……男の人のシンボルとも言えるあそこに、思い切りキックだよ?
それも三人に。
「大丈夫か、お前?」
その男の子が声を掛けてきた。何だろう、この胸の高鳴りは?
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
私は深々とその男の人に頭を下げて感謝の意を伝える。
「当たり前の事をしたまでだ。困ってる人を助けるのは、当然の事だからな。ハッハッハ~!」
暗くてはっきりと顔は見えないけど、そんなの関係なくこの人自身が格好いい。
「じゃあオレ急いでるから、気を付けて帰りなよ」
彼はそう言い、暗闇へと走り去っていく。
あっ! 名前だけでも――。
「あのぉ!! 名前……なんていうんですかっ!?」
私は出来るだけ大きな声で叫んだ。
「山下 光太!!」
彼も大声で答えてくれた。彼の優しい声が、暗くて静かな夜道に響く。
名前だけ言って、再び私に背を向け走り出す。
私はただただ、彼の背中が暗闇へと見えなくなるまで凝視していた。
彼の背中が愛しく思える。
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