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――――――…
『ハァッ…ハァッ…ハァッ……』
その日の深夜、葵は目を覚ました。
息は荒く、寝間着は汗でグッショリと濡れている。
『…夢…か…』
葵は立ち上がると、総司を起こさないよう静かに部屋を出た。
庭に出て井戸から水を汲み上げて顔を洗うと、縁側に腰を下ろした。
『クシュン…』
さすがに夜はまだ冷えるな…。
昼間は少し暖かくなったとは言え夜はまだ冷える。
春の冷たい風で葵の汗は乾いていた。
「眠れねぇのか?」
そこには土方が立っていた。
『土方さん、まだ起きてたんですか?』
「俺は廁に行ってきただけだ。お前こそこんな遅くにどうした。」
土方は葵の隣に座り月を見上げた。
『少し、怖い夢を見てしまって…。風にでもあたろうかと。』
月を見ていた土方は葵に視線を移した。
「昼間斬った奴が夢にでもでてきたか?」
『なんで…』
「俺達だって、最初から平気で人を斬ったわけじゃねぇ。初めて人を斬ったときはそうやって夢でうなされたさ…。」
そしてまた、土方は月を見上げた。
『そうなんですか?でも俺達って…』
葵は他に誰が?と土方をみた。
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