172人が本棚に入れています
本棚に追加
/351ページ
待ち合わせの時間。
車の時計は、
八時、少し前。
30分も前に来た。
彼を待つ時間が好き。
恋しい人を待つ時間は、
人並みな私を美しく変える…
………と、
勝手に、
思う。
駐車場にとめた車から海が見える。
半島の先端に位置するこの地方都市からは、
街の灯りがクリスマスツリーみたいに、
海岸線を縁取って、
とてもきれい。
何気ない景色を美しいと思わせるのは、
恋の『魔法』…
駐車場の前には防波堤をかねた、
遊歩道があって、
海を見ながら散歩ができるようになってる。
遊歩道のパームツリーと夜景の波の音。
ロマンティックなロケーション。
恋人たちが手をつなぎながら、
向こうから歩いて来るのが見えた。
そのあとを付けるように後ろから……
男。
闇の中のシルエットは、
怪しげな感じで。
街灯に浮かんだ男は、
!
意外……。
可愛い優しい感じがする、
小さな顔と長い手足。
男は目をつぶり顔をしかめて両手に力……
!!!
右手に光に縁取られたハサミが握られていた。
神のハサミ!
人には見えない、
この世のものではないハサミ。
最初のコメントを投稿しよう!