赤い糸

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待ち合わせの時間。 車の時計は、 八時、少し前。 30分も前に来た。 彼を待つ時間が好き。 恋しい人を待つ時間は、 人並みな私を美しく変える… ………と、 勝手に、 思う。 駐車場にとめた車から海が見える。 半島の先端に位置するこの地方都市からは、 街の灯りがクリスマスツリーみたいに、 海岸線を縁取って、 とてもきれい。 何気ない景色を美しいと思わせるのは、 恋の『魔法』… 駐車場の前には防波堤をかねた、 遊歩道があって、 海を見ながら散歩ができるようになってる。 遊歩道のパームツリーと夜景の波の音。 ロマンティックなロケーション。 恋人たちが手をつなぎながら、 向こうから歩いて来るのが見えた。 そのあとを付けるように後ろから…… 男。 闇の中のシルエットは、 怪しげな感じで。 街灯に浮かんだ男は、 ! 意外……。 可愛い優しい感じがする、 小さな顔と長い手足。 男は目をつぶり顔をしかめて両手に力…… !!! 右手に光に縁取られたハサミが握られていた。 神のハサミ! 人には見えない、 この世のものではないハサミ。
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