赤い糸

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縁切り男……! 神様から存在は聞いていたけど初めて見た。 運命の赤い糸を切るのが仕事。 『結ぶ仕事があれば切る仕事もある。 相反する力を持って、 完結した一つの力となる。 (神様談)』 恋の女神の私には、 敵…?…にあたる神の使い。 私は車を降りて走る。 間に合わない。 男がごく当たり前のことをするように、 恋人たちの赤い糸を切った。 『なんてことを!』 縁切り男の切った赤い糸は私にもつなげることは不可能。 完全無欠に恋心を断ち切るハサミを神から与えられてる。 「ちょっと、あなた!」 怒りに声が震える。 「えっ?」 振り返る、男。 その視線… 胸に、走る電気。 チリチリとプラズマ化した怒り… 違う… 心がキュンと痛む。 何? この感じ? 「……切ったわね。」 言うだけでやっとだった。 縁切り男の眼鏡の奥の瞳… 清らかな心の在り方… 「わっ! 女神! 初めて会った。」 人の良い笑顔で手を伸ばす。 握手したいらしい… 手を払って、 「敵に握手なんてしない!」 不思議そうに考え込んで縁切り男は言った。
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