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望むのは抜けるような青空。辺りを見渡せば、低くなだらかな山々が広がり、濃緑色の木々もまばらな裾野は黄褐色の起伏に富んでいる。
そこに潜むのは一人の少年。色素の薄い茶髪が地面の色とよく似ていた。
『準備は整ったか?』
少年の耳に声が届く。周囲には“標的”と少年以外誰もいない。まして通信機から発せられた声でもなかった。
姿なき風の囁きに少年は答える。
「ああ、いつでもいける」
視線の先には数台のトラックと人影があった。十四、五人はいるようだ。トラックは風景に溶け込むように黄褐色の迷彩が施されていた。
『雨宮も準備オーケーだぜ。作戦開始だ。殺さない程度に暴れてこい!』
声が切れるのも待たず、少年は弾丸のように駆けだした。
数人が気づいて振り向いたがそれほど警戒している様子はない。
何をしようとしているのかは知らないが所詮は子供だとたかをくくっているのだろう。
一人の男が明らかにふざけて銃を向けた。発砲するつもりはなく脅すだけのつもりだった。
しかし、
ズドン、と鈍い音が響く。
背をくの字に曲げて崩れ落ちる男の眼前に少年は立っていた。
距離は開いていたはずなのに少年は一瞬で肉薄し、拳を振り抜いたのだ。
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