私とフラッグ

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夜。いつもの様に一人で日記を書いていた。なんだかその日はいつもより暇で、今までの日記を読み返して見る事にした。案の定、私の日記は読み返しても面白みの欠片もない日記だった。しかし、少し意外だったのは、私の日記にフラッグの事が書かれていた事だった。 私は自分の思っていた以上に日記はフラッグの事ばかりだった。フラッグが喋らなかった頃は、フラッグに自分の言っている事が通じるか、フラッグは何を考えているのか、フラッグはいったい何の為に私の目の前にいるのか、そんな事ばかり書いてあった。 最後にフラッグの事について触れていた日には、フラッグが初めて私に話し掛けてた時だった。 日記には、これから沢山フラッグと話が出来ると喜びに溢れていた。 最近の出来事なのに、その日記の自分と今の自分が違い過ぎて、まるで随分昔の事のように思えた。少しだけ切なくなったけど、涙は出なかった。もう自分の心の中では終わった話として片付けられているのだと思った。 フラッグがいなくなった毎日は、随分と楽だった。煙草を吸ったり酒を飲んだりしても何も言われなくなった。一日中パソコンやゲームをして、夜中遅く起きていても平気だった。でも少しだけ、いつも視界のどこかに入っていたフラッグがどこにもいなくて、ゲームをするにも何をするにも、視界が見え過ぎて気持ち悪かった。慣 れている事を急に変えるのは、やはり難しい事らしい。 あと、フラッグがいなくなってから、自分の周りの世界は何だか騒がしくなった気がする。毎日同じ時間、楽しそうに登下校していた学生たちの様子が何だかおかしい。まるで何かに脅える様に、学生たちは遊ばずに帰ってしまった。いつも深夜になるまでゲームセンター等で遊び明かしている者も、柄にもなく早く帰っている。近 所のおばさんの立ち話も、いつも以上にひそひそ固まって喋っている。原因は分からなかったが、こんな時もあるよと、私は然程気にもとめなかった。
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