私とフラッグ

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一つだけ、フラッグがいなくなってから不思議な事が起きた。毎日必ずテーブルに乗っているご飯が、どんなに日が過ぎても出なくなった。毎朝毎朝、私が起きるのが遅い所為なのか、冷え切っていた朝ご飯が。 しかし私は困らなかった。別にテーブルの上にいちいち出されなくても、近くのコンビニに行けば食事なんか幾らでも用意できる。寧ろ、最近は用意された食事に飽きていて、新商品のコンビに弁当が食べたいぐらいだった。 ただ、温められたコンビに弁当よりも、はるかに暖かく感じたのは用意された朝ご飯だったけど。 久しぶりにニュースを見た。アニメやバラエティ番組ばかり見ていたので、テレビ画面の中で真面目な顔して紙に書かれた文章をただ読み上げる動作が無性に笑えた。 テレビは私の近所を映していた。私の通ったところのある場所ばかりだった。馴染みの店ののおばちゃんが映った。私は気持ちが高ぶって、思わず画面越しのおばちゃんを指差した。でも指を差したところで私以外見ているものはいない。フラッグは燃え去ったのだ。 私は寂しく宙に上げられた指をゆっくり下ろした。 少し気が落ちて、でもやっぱりおばちゃんが映っている事に興奮して。私は改めてテレビ画面を見直した。 おばちゃんは何か言っている。初めてみた真面目な顔をしながら。 『・・・・・・・』 理解が出来なかった。難しい言葉を使ったからと言う訳ではない。難しい言葉を使った訳ではないと言うのに。その後沢山の知り合いが画面に映った。その度興奮し、誰だ誰だとはしゃいだが、出る人全ての発言の意味が理解出来なかった。 テレビを見てつまらないと感じたのは、その時が初めてかもしれない。
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