3人が本棚に入れています
本棚に追加
遠い雪山に実家がある俺、高山 シュンは、大学進学を機に家を出た。
本当はきらびやかな都会の街、東京に行きたかったが、生来の臆病が仇となり、隣の県、埼玉へと行くことにした。
憧れの街には電車で三十分。中心部ともなれば田舎者の俺には眩しいほどの都会。か、と思えば少し外れるだけで安心できる位の田舎と変貌するのだから、俺のような大学デビューにはもってこいの場所かもしれない。
遊ぶのは都会、住むのは田舎が可能。故にオレの住んでいるアパートは安い。しかもわりかし新しい。
なかなか満足しているのだが、招く者は皆『ボロい』と言う。
地平線と山に囲まれている大正に建てられた実家に比べれば、築十五年木造でも新築で、バス停徒歩三十分は近いと言わざるをえない。しかもコンビニまであるのだから十分だ。皆贅沢に支配されているようだ。
埼玉に住んで早三年。就活が物凄くキツイこの世の中で、実家に帰ることも視野に入れている。
そんなオレに声がかかった。
「シュンちゃんご飯出来たよ」
毎年冬になると遊びに来る幼馴染みのユキネ。都会でも見られない美人と人は言うが、身近過ぎてオレには何にも感じない。
最初のコメントを投稿しよう!