はーるよこい!

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 オレの地元は雪が深く、正直何も出来ない。いいとこ無限に続く錯覚を起こす雪かきくらい。ふと、窓を見るとちらついている雪。ユキネが来ると、帰る三月の終わりまで降るのだが、原因はまさにその人。実は彼女の正体は昔話や怪談によく出る『雪女』だったりする。 「ねえ、シュンちゃん」  出来あがった料理をテーブルに運びながら問う。 。 「暑いからクーラーかけていい?」 「ウェア出してからにしてくれ。オレは寒い」  サンキュー、とウェアを取りに行くユキネに溜め息を吐きつつ、既に三枚着ている上着にシャツを追加した。  雪女が伝説や噂だけの存在だと知ったのは村を出てから。  ちょっと身体が冷たくて、暑いのが苦手で半径二キロ範囲が雪になる以外は特に変わったことはない。冬以外は一年中雪が降り積もっているような山頂辺りに住んでおり、国にも認められている立派な日本人らしい。  この間もその降雪能力を活かし、国の代表としてバンクーバーに雪を集めてきたと、ユキネの母親は自慢していた。  そんなユキネが仕事も決まらないオレのところに何故来ているかと言うと、ある目的の為である。
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