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その言葉に憮然とした表情を浮かべる金髪に浅黒い肌の少女。
その隣りにいる黒髪をボブカットにした色白の少女が飛川に食ってかかる。
「…っ!その言葉訂正して下さいっ!私達は確かに所謂超能力の様なモノを持ってます!けど、そんな異常者みたいな呼ばれ方は…」
「止めなよ、綺亜羅」
浅黒い肌の少女が綺亜羅と呼ばれた少女の手首を握る。
「綺紗羅…」
「話はそれだけ?なら失礼するわ。少しでも辰巳パパンと利恵ママンの側にいたいもの。ミッション開始の時にまた呼んで頂戴」
そして浅黒い肌の少女―綺紗羅は綺亜羅を引き摺って部屋から出ていった。
「ちょ、綺紗羅っ!一体どうしたのよ?」
部屋からかなり離れた場所の廊下で綺紗羅は舌打ちした。
「…気に入らないわね」
「え…?」
「あの女…私達を利用しようとしてるわ。その為にパパンとママンをこんな目に…絶対赦さない」
その顔に浮かぶのは尋常ならざる怒り。
綺紗羅にとって育ての親である辰巳と利恵は何にも換えがたい大切な存在だった。
「飛川天音…今はアンタの手のひらで踊ってやるよ。だが…」
人質が人質の意味を為さなくなったその時は死んだ方がいいと思う様な屈辱を与えてやる。
綺紗羅はそう誓った。
「その世界の何処かにある宝玉とやらを取ってくれば風音の病は治るのじゃな?」
和服を着た女性が飛川に尋ねる。
かつて腰まで伸ばしていた美しい黒髪は、今は肩口で切り揃えてあった。
愛し合った男の生まれ変わりである少年が短い髪の方が好みであると言ったからだ。
彼女はそれほどその少年を愛していた。
桜姫と呼ばれた女―咲耶。
彼女は愛しき人の病を治す為に此所に来ていた。
異常者呼ばわりされても痛痒に感じない。
彼女にとってそれは瑣末な事だった。
元々忌み嫌われた存在であった彼女。
蔑まれる事は慣れている。
それよりもそんな存在の自分に愛を注いでくれる少年を失う事が辛かった。
「物分かりが良くて助かるわ。貴女の頑張りで掛け替えの無い命が救われるのよ。良ければ、貴女の大事な人を優先に…」
「嬉しいが、その儀は遠慮する。大事な人を失うのが辛いのは妾だけじゃない。此所にいるみんな全てが同じ想いじゃろうから」
そう言って咲耶は部屋を出た。
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