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それは飛川も例外では無く、もし誰とも付き合って無かったら惚れていただろうと思う程、銀髪の美形に心惹かれていた。
コードネーム・シルバーフロスト。
それが彼の呼び名である。
本名は彼の妻と子しか知らない。
そして彼の妻は隣りにいるアロイスの敵対者であった。
だが彼はプロの始末人である。
仕事なら例え敵対者とも組む。
その内容が妻子の危険に関わるのならその限りではないが。
「首尾良くいって貰わないと困りますわ。私だって…大事な人を救う為に宝石が必要なのですから」
そう言って爪を噛む飛川。
上手く言ってくれなきゃ困る。
その為に今まで何度もこの手を汚してきたのだから。
「安んじてお任せあれ、ミス天音」
慇懃無礼に頭を下げるアロイス。
「…ミセス、です」
「ああ、すいません!もう、ダメじゃないですか、アロイスさん!では私達はこれで!」
その場を取り繕いながら部屋を出る二人。
飛川とアロイスはどうやら仲良くなれそうにない様だ。
「わざとらしいですよ、アロイスさん」
「挑発に乗ってくれれば御し易いと思ったが…中々どうして、操り師の腕がいいのかな?」
笑みを浮かべるアロイス。
「アレはどの世界に於いても滅ぼさねばならぬ存在だよ。あの深淵の魔女はな」
バランスブレイカーの存在を認める訳にはいかない。
制御の利く緊張関係が世界のバランスを保つ。
その為にヴァイスクロイツともう一つの組織―スルーシが存在する。
自分達が長年かけて作り上げた壮大な茶番劇を壊す者は赦さない。
アロイスはそう考えていた。
それがシルバーフロストの様な存在を容認しているのである。
「勝てる…でしょうか?あの伝説の魔女に…」
「その為にあの野獣を生かしてるのだよ。彼も…重要な駒だからね。所で…今日こそは私のベッドに来てくれるのだろうね?」
「冗談を。私の操は妻に捧げるものですから」
「ふう…また私にあの無粋な穴を使えというのかい?君の名前を連呼してやろうか」
「…殺害しますよ?アロイスさん」
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