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そして、彼等のミッションの舞台になる世界に繋がる次元の扉を抜けて、先発を買って出たイシュタルが目的地に向かって疾走していたのである。
するとイシュタルは微かな殺気を感じた。
と同時に弾丸がイシュタルの頬をかすめる。
何処から?
イシュタルは動きを止めた。
しかし周囲に人の存在を感じない。
そしてまた殺気を感じる。
慌てて身を屈める。
すると髪の毛の一部を弾丸に持っていかれた。
いけない!
止まっていては狙い撃ちにされる!
けど一体何処から私は狙撃されているの?
イシュタルはやがてとんでもない結論に辿り着いた。
弾丸の飛んできた方向に疾走する。
位置を変えながら、倍速の疾走で。
超長距離狙撃。
そんな事が出来る人間と武器がこの世界に存在するのか?
やがてイシュタルは長砲身の銃を構える者とその隣りに侍るスーツ姿の女性の存在を確認した。
「アイツらか…っ!」
イシュタルはスピードを早め、ナイフを構える。
弾丸を避けたら接近戦、なら私に分がある!
「私の邪魔をする悪いヤツ…死ねぇぇぇっ!」
イシュタルは中性的なルックスの狙撃手にナイフを振り下ろす。
だが、刹那、強烈な殺気を感じた。
慌てて身を捩らせる。
それは正解だった。
そのまま突撃していたら、スーツ姿の女性が発したルビー色の魔弾に全身を貫かれただろうから。
だが、その魔弾はイシュタルの右肩を撃ち貫いた。
「甚だ不本意だが…今の我々に死角は無い。暗殺者の少女よ」
中性的なルックスの狙撃手が無表情で言う。
名前は六波羅理紀。
女性である。
もっとも彼女自身性別を意識した事は無い。
そして隣りに侍るのはジュリアンヌという名の女性。
魔弾の射手という二つ名で有名である。
この二人はかつて敵であり、ジュリアンヌは理紀の視力を奪った相手でもある。
それが今は肩を並べ、イシュタルに対峙している。
それが二人の住む世界に共通するルール。
昨日の敵は今日の味方、というのが普通に有り得る世界。
俗にいう殺し屋の世界なのだから。
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