共生

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「じゃあどうするの。さっきのが妥協案なんだけど」 「うーん…今まで我慢してた分独占したいんだけどなあ」  なんでこいつは普通だったら照れて言えない様なことを真剣な顔で言うのだろうか。ある意味で大物かもしれない。 「ていうかさ私に聞いておいてすぐ却下ってどうなの」 奴は眉を下げて困ったように早口でこう言った。 「ごめん……だってさ、僕は今日大好きなキミと初めて話して初めて触れたんだよ? 他の学校やらバイトやらの奴らとは普通に話したりべたべた触れ合ったりしてるワケだろ? その分埋め合わせって言うのかな、2人っきりでずっと時間が許す限り話したり触ったり――…は、ちょっとあれだけど、したいんだ。好きだから」  なんでだろう、絶句。  純粋に、真っ直ぐに歪んでるなあ。奴の気持ちは一直線に私に突き刺さる。その直線の色がちょっと他とズレているのが問題。  触ることは嫌なんだこいつは。家に連れ込まれた途端に襲われたりするかと思ったら、手を緩く、しかし解けないように縛るだけで。傷つけたくないという思いがひしひし伝わった。誘拐の時点であれだけど。
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