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そこで私はある事に気がついた。
「良く考えたらさ、お互いに好意ってのは抱いてるんだから普通に付き合うってのは駄目なの?」
「でもキミは僕の名前だって知らないだろ。僕は結構キミの事知ってるけど」
拗ねたような表情で口を尖らせる。そうだ、名前を聞くのを忘れてた。表札が有ったような気もするけど、さっきはそんな余裕は無かった。
あれ、なんで今こんなに落ち着いてるのかな。
「僕の名前、かあ……」
「教えてくれないの」
「だって僕犯罪者じゃん」
「じゃあ何て呼べばいいの。面倒じゃない」
「好きなように呼んでよ」
「じゃあ犯罪者」
「それはちょっと…」
「じゃあロリコン」
「ロ、ロリ…っ? 高校生はロリじゃないっ」
「じゃあ誘拐犯」
「否定は出来ないけども!」
「じゃあ……、クロ」
「――…なんで?」
「全身黒い服だから」
「……わかった、いいよ」
「本名はまたいずれね」
光源が星と月のあかりと近くの街灯だけのほの暗い部屋の中でクロが音もなく笑った。
「あ、お湯」
「忘れてた! やべっ」
私もその滑稽な姿を見て笑った。
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