行動

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 君の事を知り尽した僕はコンビニのバイトが終わる時間も、その帰り道も良く知っている。もちろん、帰り道に僕の家の近くが含まれてる事も。それを狙ってやればいい。簡単な事だよね。ただの高校生の細身の女の子の口にハンカチを宛ててナイフで脅して家に連れてくればいいんだから。 きっと、大丈夫だよね? 失敗とかしないよね? ――…今日がそのチャンス。実行、しちゃおう。大丈夫、出来る。失敗する要素なんて無いんだから。 ―※―  やってしまえば簡単な事だった。本当に簡単だった。 右手のナイフを彼女の脇腹に、左手のハンカチを彼女の口に宛て後ろからそっと騒ぐと刺すぞ、と囁けば驚いた彼女はコクコクと頷き大人しく僕について来たんだ。 ただそれだけで終わった。僕の心配とは裏腹に。あっけらかんと終わった。心配なんて、ただの杞憂だった。  実はとっても心配だったんだ。ハンカチを宛てても悲鳴をあげられたり、僕の腕を振り切って逃げられたりするんじゃないかって。でもやっぱり女の子だよね、ハンカチを宛てた口辺りが硬直してた。恐怖を感じたのかもしれない。それすら快感に感じる僕はヘンタイなのかもしれない。いや、こうして誘拐、監禁まがいな事をしてる時点でヘンタイか。  ここは僕のアパートの部屋。ちなみに二階。すでに夜である上に厚いカーテンを閉め切った僕の部屋は冷たく暗かった。 沈黙の中、君は僕を見ている。後ろ手に縛られながら。同じ沈黙の中、僕は君を見ている。狂喜にさらされながら。やっぱり僕はヘンタイだ。自嘲してしまう。君にだけだけどね、と心の中で付け足して。
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