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「あんたは私を愛せるの?」
「え?」
当たり前じゃないか。
――…そう言おうとしたけど君は僕が話す隙を与えなかった。
「この私を愛すことが出来るの? 本当に?」
君は僕を見ている。黒いガラス玉の様な、人形の目玉みたいな瞳で。無表情な瞳が僕には魅力的かつ挑発的に見えて、
「愛せるもんなら愛してみせなさいよ」
と、言わんばかりの君にちょっとした違和感を感じた。それと同時に何があろうと愛してやろうじゃないか、とヤケクソ? の様な気持ちがむくむくと芽生えて、無意識の内に
「愛して、みせるよ。恐いぐらいにね」
なんて言っていたのには自分でもびっくりしたよ。君もすごくびっくりした顔をしてたね。
だけどやっぱりすぐに余裕綽々な表情に戻って、
「まあ、せいぜい頑張ってよ? 私はそう簡単に落ちる女じゃないから」
と、ニヤリと笑った。
その時僕は初めて君の笑顔を見た。
僕が君にした誘拐、監禁という行為とは180度違う長雨の後の満天の星空が広がる美しい夜だった。
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