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この寒さで何が春の訪れだ。
春一番だけはいっちょ前に吹いて、猫背で歩くあたしを後ろに追いやる。
叔父さんの家からは少しは都会なこの街を歩く人々も、女の人はスカートをあたしと同じ様に抑えながらよたよたと前へ進んでいる。
春なのか春じゃないのか。
北国に生まれた不満を頭の中だけで駆け巡らせながら、叔父さんからもらったメモ帳の切れ端を、制服のポケットから風に飛ばされないように慎重に取り出す。
そこにはあたしが今日から住む所の名前と地図だけが書いてある。
「…きそう…」
思わず口に出した。
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