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人混みの中から男の奇声が上がった。それが引き金になったのか、未来の周りでも男女問わず悲鳴にも似た叫び声が上がり、一瞬にしてスクランブル交差点付近は騒然となった。
「恵理花ちゃん、ここから離れよう」
荒れ始めた周りから少しでも早く離れようと、未来は恵理花の手を掴み走り出す。
「ちょっ、そんなに引っ張らないでよ、未来」
「だって、ここ絶対危ないよ!」
周りでは早くも乱闘や強姦が行われていた。止める力も、助ける力もない未来は自分が逃げることだけに必死だった。
狂気に取りつかれた人混みの中を無我夢中で駆け抜ける。乱闘する男の怒声。強姦される女の悲鳴。それだけが未来の頭の中を叩き続けた。
「待って、未来。ちょっと休憩」
細い路地に入ると、恵理花が大きく肩で呼吸しながら立ち止まる。交差点からはだいぶ離れ、安全だと察した未来は暫く休憩することにした。
「ねぇ、何なの? 未成年者選考計画って……」
腰を下ろしながら恵理花が尋ねる。
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