死んだ大都市

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貴族……そういえばそんなのあったな。 と、反応するべきはそこじゃない。 大量殺戮を行ったのはルピアの父で、それを小さな頃のルピアが見てたということだ。 こんなことを聞いても全く動揺しない俺がいる。そんな自分に、少し恐怖を感じた。 「それが、トラウマだって事か?」 あとで考えてみれば、もっと違う言葉があったと思う。 優しく、ルピアの傷を少しでも癒すような言葉が。 だけど、それは俺には思い付かない。 「……そうよ。小さな子供が、目の前で大量の血と死体を見たの。そんな所、行きたいわけないでしょ」 ルピアの口調が少しだけ冷たくなった気がする。 だけど、行きたくない理由はわかった。 俺だって、そんなことがあれば行きたくないと思う。 それでも………… 「俺と一緒なら、大丈夫だろ?」 行かなくちゃいけない。
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