誰も信じないおとぎ話

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「……もういいや、それで話の続きなんだけど」 「あー、考えが甘いとか何とか言ってた」  悠はうなだれていた顔を上げ、笑顔に戻った。 「そう! 俺達もう明後日で卒業だろ? そこにとうとう明日、話題の魔力測定班がこの学校に来るんだよ」  魔力測定班とはそのままの、魔力を測定する班です。  これもこれで話題となっていて、全国の小中高学校に魔力を測定しに行き、魔力が確認された生徒は本人の任意で地方に次々と建てられた、これまた話題になっている魔法育成機関学校に転校、もしくは入学することになるんすよ。 「っていうか、俺はそんなの知らないって。もう皆知ってるのか?」 「フッ……雅弥、先生とは友好度を高めておくべきだぜ……?」  ああ思い出した、コイツ最低野郎でした。 「まぁ明日になるまで隠してるのは、怖くなって登校拒否になる生徒がいるかもしれないからって、先生が言ってた」  先生、俺達の担任の教師、名前? 知らないっすよ。  そもそも後二日で名前も出なくなる先生の名前をどうして出さなければならないのか、問い詰めたい、小一時間程問い詰めたい。 「で、つまり魔法が俺達にとっての夢物語じゃなく、もしかすると今後の人生に深く関わってくるかもしれないって事?」 「そっ、にしても魔法測定かー……、どんな測定なんだろうな?」  悠が気になるのはどうもそこらしいです。普通は魔法ってどんなものなんだろう、とか思うんだけど。 「俺は普通にアレだと思う、アレ……良く漫画とかである、持っただけでソイツの魔力が解るって石」 「あー、アレね、アレ。大体アレで主人公の魔力が凄すぎて、生徒とか教師から注目を浴びるっていうアレ、あのパターン」 「そうそう、それで主人公と主人公の友達数人に嫌がらせをする、気取った金持ちナルシストの坊っちゃんがいたり」  ダメだ、面白くてだんだん顔がにやけてきた。  それは悠も同じらしいです。二人で口を押さえて俺達は笑いをこらえていました。  そこに、休み時間の終わりを知らせるチャイムが鳴った。  それと同時に教室の中に入ってくる山本先生。 「はい、席に着いて」  そう言われ、悠は自分の席へと戻り、俺も授業の準備を始める。  俺はこの時、ワクワクしていたのかもしれないですね。小さい頃、夢にまで見た魔法がこんなに身近に迫っている事に。  そう考えてた時期が俺にもありました。
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