誰も信じないおとぎ話

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..........  次の日、悠の言った通り、朝のHRで突然山本先生が一限目に魔力測定がある事を発表しました。  なんでも、三年生は一限目に測定して二三限は恒例の卒業式練習、昼飯は無いので三限で終わり、測定の結果は春休みに各個人の家に送られるらしいです。  でも、たった一限で三年全員の測定が出来るか? そりゃあ持っただけでソイツの魔力が解る石ってのが本当にあるなら終わるんでしょうけども。 「あるわけないよな……」  そんな事を、測定場所の体育館に移動する間に考えていました。  まぁ妥当な場所でしょう。保健室だと時間が掛かるだろうし。  体育館の中に入ると、ズラッと一列に並んだ机にズラッと並ぶ注射器の数々。その机を前に何人もの白衣を着た人がこれまたズラッと机に沿って座っています。 「はい、生徒はこのお医者さんの居る前に人数が均等になるように並んでくださーい」  学年主任の先生がメガホンを使って生徒達に呼び掛けます。  成る程、目には目を、歯には歯を、大量の人数には大量の人数を、か。  これなら一限で終わるどころか、この後の卒業式の練習に使う椅子を出す時間さえあります。  俺が並んだのは後ろの方で、まぁ並んだ人から次々と注射を射っているのか血を抜いているのかは知りませんが、結構早いペースで順番は進み、とうとう俺の番。  初めあれだけ居た三年全員は、測定を終えた生徒から教室に戻っていました。 「はい、君の名前は?」 「え? あっ、要 雅弥です」  まさか名前を聞かれるとは……、でも考えてみれば当然ですか。間違えたら大変だし。  白衣を着た男性は紙に何かを書き込んでいます。 「はい、では今から血を取ります」  居るよ、何かを言う度に"はい"っていう人結構居るよ。この人もそのパターンだよ。  採血を終え、俺も体育館から出ようとした時、ふいと横から声が掛かかりました。 「おー雅弥」  悠です、友達Aの分際でまだ出てくるつもりですか。 「結局、採血だけだったな」  歩いている途中、ふと誰でも思うであろう事を呟いてみました。 「なんか普通過ぎて面白く無かったな」 「お前はこの測定に何を期待していたんだよ」 「いや、昨日言ってたヤツだったら面白かったなぁと」  確かにそれだったら面白い……か? 逆に怖いよ。
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