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それもそのはず。
彼はラシャシエ国に仕える正規の騎士であり、そしてエドはそのラシャシエ国が催す(もよおす)という馬上槍試合に参加を申し込みに来たのだった。
「しかしなんでわざわざ、槍試合なんて物騒なものに参加したいと思ったんだ?お前さんはむしろ学者とか、魔法の…」
「僕は」声を張って、騎士の言葉を遮る。
「騎士になりたいんです」
「まぁ、その騎士とかいうものをやってる身としては、そう言ってもらえるのは嬉しいし、少年のような若者がいるのも頼もしい限りなんだが……」
中年の騎士はそんなことを呟きながらその傷だらけの腕を組んだ。
雲行きが怪しかった。
おそらく中年の騎士は言葉を探しているのだろう。どういえば傷つけずに断れるかという言葉を。
エドはちらりと視線を斜め後ろへ向けてみた。
アルスに自分の援護をしてくれないかと期待したのだが、親友でありそして剣の師でもある旅の相棒、そんな思いに気づかないのか黙って自分を見返してきただけだ。
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