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「少年よ」
代わりに別の声が答えた。
中年の騎士から三歩ほど下がったところ、今までずっと黙っていた若い男である。
「少年よ、負けると分かっている者を参加させるほど、我々騎士も暇ではないのだよ」
「おいクリオルク…」
「トエイン様、はっきり言った方がいいのです」
クリオルクと呼ばれた男は顎(あご)の尖った鋭い顔つきをしており、右手に羽根ペンを、そして左手には羊皮紙の束を抱えていた。
その様から彼を記録係だろうと思っていたのだが、今の言動からすると、彼も同じく騎士らしい。
そういえば、その腰には剣も吊されている。
「負けたりはしません。どんな怪我をしたって、最後には勝ってみせます!」
「…心意気だけでは何にもならない。お前が三度……いや十度試合を行ったとしても、そのすべての相手に負けることはやらなくても分かる」
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