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<まず、戦闘不能の部下達にトドメを刺さなかったことに礼を言う>
男はレイに対して感謝と敬意を込めて、礼を言った。
<はぁ…それはどうも>
部下が助けられたからといって、こうも敵に感謝できるものなのだろうか。
呆気にとられて、つい油断しそうになるが、相手の意図が分からない以上、気を引き締めて集中する。
<そこでこちら側から提案だ。こちらは艦への攻撃を中止し、一時撤退しよう。そのかわり、戦闘不能の"ボルグ"を回収させて欲しい>
この提案を、レイの独断で決めてしまって良いものか悩んだが、このままでは艦は確実に落とされてしまうだろう。
<わかりました。では僕はこれで>
レイは突撃銃とサーベルを腰部に装着し、艦に向かう。
敵に対して、背を向け武装を解くのは自殺行為だが、あのパイロットは何もしないという確信めいたものをレイは感じていた。
艦に接近すると、エアロックが開き、受け入れ態勢に入る。
レイは機体をスルッと潜り込ませて、格納庫に入る。
格納庫には、整備士以外にも軍人が機関銃を持って待機していた。
レイが機体から降りた瞬間、軍人達によって拘束されてしまうだろう。
<レイ・シノノメ! 今すぐ"ドール"から降りてきなさい!! 繰り返す!! 今すぐ"ドール"から降りてきなさい>
オープンになったままの通信機から、怒鳴り声に近い音量で、声が聞こえてくる。
<…了解>
「システムオフ」
レイは軽く返事をした後、システムを切り、ハッチを開けてリフトで下まで降りる。
それと同時に、数人の軍人がレイを拘束し、将校やら研究者達が、ファーストサンプルに群がる。
「よくやった。君は我々にとっての革新的な進歩の後押しをした。しかし、誰も動かすことが出来なかった"ドール"を民間人が操縦したのは大問題だ」
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