袖掴むは多量の輪

2/8
3083人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
「クスクス」 笑いが止まらない。  私は授業もそっちのけで、指輪を教室に射し込む夏の陽光に透かす プラチナがキラキラして綺麗だ。 この指輪の価値はそれだけではない。 私の誕生日に兄がオーダーメイドしてくれた完全なるオンリーワンだ。 オンリーワン 世界に一つしか存在しないデザイン。 そう考えるだけで胸が踊る。 今まで既製品にしか縁のなかった私にとって、何物にもかえがたい宝物だ。 (は!!) そこで私は気付く。 これを無くしてしまったら、もう二度とこの指輪を手に入れることはできない。 (た、大変じゃない!) 私は指輪を学校に持ってきたことを後悔する。そして、指輪を無くさぬように握り締め、じっと授業が終わるのを待った。 授業が終わると、私は早速二ノ介に駆け寄り、事情を話した。 二ノ介は話しを聞き終えると、額にじんわりと汗を浮かべ、指輪を握る私の拳を眺めた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!