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二ノ介は釣銭口から素早く五十円玉二枚を取る。
「帰らせてもらう」
「ちょ、ちょっと!」
きびすを反した二ノ介の腕に私はしがみ付く。
「待ちなさい!私の五十円!返しなさいよ!」
「これは昨日貸した分として返してもらう」
「噛むわよ!放さないと指を噛むから!ニンニク臭の歯形とヨダレが指についてもいいの!?」
二ノ介は目を剥く。
「ちょっと待て!たかだか五十円だろ?そこまでするか!?」
「女子高生は五十円のためなら噛みつくのよ!いいの!?きっと高校生活ワースト3位ぐらいの嫌な記憶になるわよ!」
「いや・・・・・間違いなくワースト1位だろ?」
「だったら放しなさいよ!」
二ノ介はしばらく抵抗を続けていたが、やがて「わかった」と力を抜き、溜め息をついた。
「たかだか五十円のために・・・・この歳で・・・・これ以上女性に失望しなくねえ。手を出せ」
私が手の平を差し出すと、二ノ介は五十円玉二枚を乗せた。
「全部くれるの?」
「ああ」
私は二ノ介の気が変わらないうちに、硬貨をかたく握り締める。
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