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「………おい、シン!ちょっと待てって!」
ずんずん大股で歩いて行くシンを、病院を出てすぐのロータリーの噴水の前で、オレはようやく捕まえた。
「……何?俊哉くん」
そう言って、
シンがゆっくり振り返る。
……あ、まただ。
またさっきの、
あの冷ややかな表情。
……コイツって、
こんな顔するヤツだったか……?
「……オレが何か気に障る事言ったんなら謝るよ、けど、アイツが……公平がすっげぇ心配してたから……」
「………」
「……それに、イキナリ別行動にしようって言われて、仁も、なんつーか、アイツあんな感じで何にも言わねーけど、本当はワケ分かんなくて不安だと思うんだ……」
……こんな事も、
今このタイミングで、しかも勝手に代弁されて、果たして仁が喜ぶ事なのかどうか分からなかったけど、言わずにはいられなかった。
…あれじゃ仁があまりに不憫だ。
「……ワケ分かんないのはどっち?」
「………は?」
「………俊哉くんだってさ、オレらに言えない事、あるんじゃない?………ナイショ事はお互い様でしょ」
…………………。
シンのその言葉に、
オレの背中に、
生ぬるい汗がつたった。
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