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……オレは、食らい付くように公平の唇を求めた。
歯と歯の間を割って、舌を滑り込ませて、その更に奥の公平の舌を確実に捕らえて、力任せに絡ませた。
……こんな愛し方は、
多分、傲慢でしかない。
全然フェアじゃない。
…ましてや、
仮にも病床に伏せている人間を力で抑圧してこんな事をしている自分は、非人道的だとさえ思う。
……頭では分かっているのに、
でも、
どうしようもなく、
自分じゃ歯止めが効かなくなっていた。
「んっ!………んんっ」
“繋がり”の隙間から、
僅かにヤツの声が漏れる。
「……なぁ、オレの事は?……大事じゃねーの……?」
重ねた唇を離して、
でも、少し動かせばまた触れるか触れない位のギリギリのはざまで、オレはもう一度聞いた。
「…誰もそんな事言ってないだろ………」
すぐにでも触れられる所にあるけど、でも、触れない。……軽く、擦れるだけ。
…それは、
完全に“繋がっている”より、
全然よっぽど、官能的な姿だ。
「…………じゃあ、大事?」
「大事だよ………」
「……どんな風に?」
「どんなって……………」
そう言って、
公平は、それきり黙ってしまった。……怒って、というより、困ったような、今にも泣き出しそうな、そんな儚い表情をしていた。
………オレって、
とんでもないサディストで、
そして、
多分とんでもなく嫉妬深い。
……知らなかった、
こんな自分がいるなんて。
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